繰り返し繰り返す

 近藤がタチの悪い酔い方をするときは、決まって女にフラれた晩だった。土方がその相手をさせられるのも毎度のことで、潰れた近藤を連れて帰るのも土方の役目になっていた。足のもつれる近藤を引きずるようにして歩く。
「次はどこの店いくう?」
「もう十分飲んだろ。帰んだよ」
「えー」
 足元のおぼつかない近藤に振り回され、土方まで大きく蛇行しながら進むはめになる。
「ほら、自分で歩いてくれ」
「トシはぁ、いーおとこだな」
 酔っ払い特有の大袈裟な抑揚で近藤がもたれかかってきた。何が可笑しいのか終始笑い声を上げている。繰り返される恒例のやりとり。
「俺にあもったいない、できた副長だよ」
 酔っ払いのたわ言と知りながら、仄かに期待している、この愚かな行為も繰り返す。
「愛してるよトシい」
 こめかみに盛大なキスを受ける。
「ふへへ」
「酒臭い」
「トおシはぁ?トシも俺好きぃ?」
 黙っていると、今度は頬にキスされた。
「なぁー」
「あーはいはい。好き好き。好きすぎて死ねる」
 煩すぎる周囲の喧騒が、その一瞬だけ静まり返ったような気がした。酔いに紛れ込ませている戯言から、痛々しく本音が滲み出てくる。我ながら重い。
「重てぇからちゃんと歩いてくれ」
「へへへ。俺も好きい」
 せめてもの救いは、この夜の全てが、明日の朝にはなかったことになることだ。

─終─



   あとがき

人様の作品を見て「好きすぎて死ねる!」と思いました。でも土方が言うとシャレにならなそう。そんな感じです。久々にちょっと不幸性な土方を書いて楽しかったです。