拒絶する白

 角ばった空気が肌を刺す。白く浮かび上がる障子窓が暗い室内の唯一の光源だった。暗い部屋は光を吸収し、平面的な黒が距離感を飲み込んでいる。
 暗闇の中で目を覚ました高杉は浮かび上がる窓に目を向けた。その異様なまでの明るさに障子を引き開ける。
 広がっていたのは雪の白さだった。音もなく、絶え間なく、降り続いている。一面に雪が積もった外は夜だというのに明るい。何者にも染まらない白は自分とはまるで縁のないもののようだった。その白は夜の闇すらも覆い隠している。それは誰かの姿と重なった。
 無性に煙草が吸いたくなり暗闇から煙管道具を手繰り寄せると、煙管を咥え、火を点けた。濁った煙が室内をさ迷った後誘われるように窓の外へと流れてゆく。外に出た煙は雪に触れる前に消えた。煙が触れることの出来なかった雪を掴もうと、影を縁取る格子の奥へ手を伸ばした。黒い室内から白い外へ差し出された手の上に柔らかく雪が留まる。だが次の瞬間には既に雪の形を留めてはいなかった。
 この冷えた指先にも未だ、雪を捕らえられないほどの体温が残っているらしい。
 液体の乗った掌を握り締めると、自嘲気味に笑みを作った。やはり自分は暗い部屋から焦がれるように眺めているしか出来ないようだ。引き入れた途端それは壊れてしまう。
──いや。
 と高杉は呟いた。自分はそれを望んでいる。
 他の目に晒される前に、他の手に掴まえられる前に、俺の手で壊れてしまえばいい。
 音のない雪は降り続く。外との繋がりは右目が捉えるものだけだ。左の目は絶えずこの空間と同じ闇を追い続けている。未練がましく映し出している世界は自分が身を置く場ではなかった。なら壊すまでだ。
 闇に体を沈めるように高杉はゆっくりと目を閉じた。閉じる直前、色鮮やかな赤が雪の中に咲いていた。

─終─



   あとがき

 昼寝から覚めたときに思いつき、書き始めたは良いもののなんだかえらい大変でした。季節はずれだし。ストーリーないし。高杉のキャラが解んないし。訳解んない話で済みませんでした。