嫉妬の色は何色かしら



 羽ばたくまつ毛に潤んだリップ。艶やかなネイルでふわふわと巻いた髪を弄ぶ。慣れない着物の裾を捌きながら、銀時は歩いていく。久方ぶりの“かまっ娘倶楽部”の出勤だった。気は乗らないものの、かまっ娘パー子を細部まで作り上げたのは、銀時の妥協なき凝り性による。
 人も天人も異形ばかり歌舞伎町ではわざわざ女装程度を振り返り見る者もいない。それゆえ、名前を呼ばれるとは思ってもみなかった。それも男の方の名前だ。
「よぉ、銀時じゃねーか」
 軽い足取りで近づいてきた近藤は銀時の姿をまじまじと見た後「今日はパー子さんなんだな」と言った。
「そー、これから店。ねェー見て見てぇ。爪、帯と合わせたのぉ、可愛くなぁい?」
「本当だ、可愛い」
「そこは引くとこだろ」
 地声から一転、無理のある銀時の裏声に平然としている近藤を、寧ろ銀時の方が冷やかに見返した。にぎわい始めた歌舞伎町に隊服を脱いだ近藤がいるということは、今夜もスナックすまいるへ搾取されに行くのだろう。
「いや、本当に可愛いし。そういう爪とか化粧とかってどうやってんだ?」
「爪は店行ってプロにやってもらうけど、化粧は自分だな。一時間ぐれーかかっけど」
「へぇー」
 近藤はしみじみと呟いた。
「大変なんだな」
 あ、コイツ、他の奴を重ねて見てやがる。自分の直感に銀時は怖気が走った。誰かと重ね合わされていることにではなく、そのことを不快に感じている自分にゾッとする。
 ありえない仮説から目を背けるように、銀時は下品なほどシナを作って近藤の腕にすがりついた。身を寄せるついでに偽物の乳を押し付ける。
「じゃあ局長さん、今度はうちのお店に来て。絶対パー子に会いに来てね」
 大袈裟なリップ音と共に近藤の頬にキスをひとつ残す。驚いた様子の近藤と毒々しいほど赤い口紅の跡に気分が晴れるのを感じてしまい、銀時は改めて絶望的な気持ちになった。

─終─



   あとがき

 自覚前のパー子さん。この後近藤さんがかまっ娘倶楽部に来て、パー子さんは複雑な気持ちになるかと思います。