「そいつは災難でしたね」
「ホント参ったな」
溜め息を吐きながら松平が茶をすすった。痴漢容疑で捕まっていた松平が屯所のほうへ戻ってきたので、その経緯を近藤が伺っていたところだった。
「そういやあんた今まで何やってたんだ?」
「あ、あぁ……」
土方の、いぶかしむような表情に近藤は苦笑しながら口籠る。「桂と協力してネット上に噂をばら撒いていた」とは言いにくい。
「まぁまぁ、土方さん。そんな嫉妬深い女房みたいに目くじら立てることもないだろィ。局長も局長でお忙しいんでしょう」
「誰が嫉妬深い女房だと、こら」
「それにしてもあん時『ホントにカッコイイってのは恥かいても泥すすっても生きてく奴のことだ』て言ったとっつぁん、渋かったァ」
「なに誤魔化そうとしてんだよ」
言及してくる土方を無視し、わざとらしい口調で沖田が話を逸らす。
「へぇ。そんなこと言ったのか」
「そう思ってたんなら早く言えよ。言った直後に撃たれたから癇に障ったのかと思っちゃったよ」
松平の言葉は何処まで本気なのか分からないが、少しはそう思っていることは確かなのだろう。それこそ恥じかいて泥すすってここまで上り詰めてきたのかもしれない。
「確かにカッコイイこと言ってるかも知れねェけど、あんまり独りで無理しないでくれよ。あんたそうしなくて済むために、俺たち真選組があるんだろ」
「はっ馬鹿か、お前」
松平が鼻で笑う。
「逆だろ。お前らがそうならないために、俺がいるじゃねェか」
冗談か本気か分かりにくいが、松平の言葉が嬉しかった。
「とっつぁん、俺たち──」
「うわァーとっつぁんカッコイイィィー」
「おい、お前なに持ち出してんだよ!それさっきの銃だろ!ギャアァァァ」
─終─