ヨナヨナエール

──世が世ならあんた大名だぜ。
 酔ったときのトシの口癖だ。そう言ってはアルコールの入った熱っぽい眼差しを向けてくる。誇らしげな時もあれば、そうではない現状に歯噛みしているときもある。
「ピンとこないがなぁ」
「あんたがそんなんだから」
 俺が苦労するんだと、トシがかぶりを振る。いいじゃねぇか今のままでと笑い、トシのコップに酒を注ぎ足す。俺の言葉に不満そうな顔をするが素直に酌を受けた。ぐびぐびと飲み干し机に突っ伏すと、そのまま首を僅かに傾けて俺を見上る。
「俺ぁいい家臣になるぜ」
 すとんと音を立ててトシは眠りに落ちていた。トシの口癖を聞くたびに俺は、世が世ではないことに感謝するのだった。

─終─



   あとがき

 衝撃の短さ。土方さんはわりと明確に主従という形でもいいと思ってる(寧ろ望んでる)かもしれない。近藤さんは嫌だろうけど。