「総悟と付き合うことにしただと!?」
大学進学も決まり、課せられるものもない弛みきった春休みを怠惰に満喫しているさなかだった。近藤の思いがけない告白につい声を張ってしまった土方は、ここがファーストフード店であることに気がつき慌てて口をつぐんだ。春めいてきた昼下がりに、おもむろに爆弾を投下しきた当の本人は、動じもせずあっけらかんと頷いた。
「うん、そう」
ズルズルとコーラをすする近藤のあまりの能天気さに土方は言葉を失う。
「総悟の合格発表の時に告白されてなぁ。めっちゃ緊張してんだ、あの総悟が。なにかと主導権握ろうとするのがまた……」
「あんたそれ本気か?本気であいつと付き合うとか言ってんの?」
「どういう意味だよ。俺は本気だけど?」
非難めいた土方の様子に、みっともなく表情を弛緩させていた近藤の顔つきも流石に険しくなる。それ以上の剣呑さで土方は返した。
「総悟とセックスできんのかって聞いてんだよ」
飲んでいたコーラを勢いよく噴き出したあと、店内に盛大な笑い声が響き渡った。爆笑は優に五分は続いただろう。止まない爆笑に土方がイライラし始めた頃、ようやく近藤は息も絶え絶えに目じりの涙を拭った。
「なに真剣に言い出すかと思ったらそんなこと……」
まだ笑いそうになるのか、一度大きく息を吐き、残りのコーラを飲み干す。
「ないない。男同士だぞ?てか俺相手だぞ。いっくら総悟が若いからって無理だろー」
先ほどの爆笑とは違い高らかに笑い飛ばす近藤に土方は一層眉間の皺を深めた。
「だったらあんた、どういうつもりで」
「どういうって……総悟のことは可愛いし?俺も好きだし?」
ここで初めて近藤が口ごもった。語尾が濁り、明瞭さを欠く。暫くもごもごとハンバーガーの包み紙をいじっていたが、土方の追及からは逃れられないと悟ってかわざとらしいほど晴れやかな顔で笑った。
「やー、でも、大丈夫だって。ちゅーは平気だったし、問題ないって」
それでも険しい表情の土方に、近藤は笑顔を引っ込めため息を吐いた。
「トシが反対するとは思わなかったなー……。なんでそんなに心配すんのか分かんないンだけど」
垂れた眉の下から窺うように見てくる近藤に、今度は土方がため息を漏らす。
土方は、沖田がどれほど近藤に恋焦がれているか知っている。面と向かって言われたことはなかったが、沖田の言葉に視線に、態度の端々に想いと焦りが滲んでいた。しかし近藤はただ三つ下の可愛い弟分の成長を自分の手の中で見ていたいだけだ。子離れできない親となんら変わらない。
「あんたが浅はかだからだろ」
双方の行き違いなど時間の問題だ。
一ヵ月後の同日同時刻同場所で、近藤は頭を抱えていた。学校も始まり、世間では期待と不安を抱きながら新しい環境に慣れようと日々を過ごしている時期だ。だが近藤が頭を悩ませているのは幼馴染との新しい関係性のことだった。
対面で土方がポテトを食べながら冷静に言った。
「だから言ったろ」