「AV貸したりしてたし、普通に女の子が好きなのかと思ってた……」
「別に男が好きとも限らねェけど……それは倒錯的に使われてたのかもな」
頭を抱える近藤の耳が赤くなっている。小声で呟かれた「うわぁ」とか「マジで」とかが漏れ聞こえる。
「フクロウだって猛禽類なんだ。ネズミだって食べる」
「え、なにその例え」
「であんたはコントローラで殴って逃げてきたってわけか」
「……そのほうが正解だったかもしれん……」
「いや、正解じゃねェから。自分で言っといてあれだけど、Wiiコン人にぶつけちゃダメだから」
珍しく愁傷な近藤は会話にもキレがない。頭を抱えたまま悲壮的な声を漏らした。
「あんなこと言うんじゃなかった……」
切迫した様子で乱暴に押し倒されテンパった近藤は「こういうの違くね?」と口走ったらしい。さらに、男同士だぞと念を押した。あの時の「やっぱり」と呟いた沖田の顔が忘れられないと近藤は言う。これまでもそういう雰囲気になることは多々あったが、些か強引に逃げまくってきた成れの果てだ。
「つか……総悟も男だったんだな……男って怖ぇな……」
ストローに口を付けながら今更なことを言う。
「あんたが上になりゃいいんじゃねェの」
「いや、無理ッ。なんか犯罪っぽくね?イケないことしてるみたいじゃね!」
ちょっと想像したのか激しく首を振る。ウーロン茶のカップに手を伸ばし胸のつかえを飲み込むと、土方は口を開いた。
「だったら別れろよ」
紙コップの氷で指先が冷たい。今口に含んだら自然に飲めそうになく、意識的に細い呼吸を繰り返す。喉の奥に溜まる唾液を飲み込むのにも苦労しながら、土方は近藤が答えるのをじっと待った。カップの水滴がトレーの紙をぽたりと濡らす。長いこと押し黙っていた近藤がゆっくりと顔を上げ、弱々しく微笑んだ。
「それも無理だわ」
滑るように落下したカップがトレーに着地する。土方は短く息を吐き、簡素な背もたれに体を預けた。
「そうか」
店内を満たす陽光の眩しさに思わず目を細める。母親を急かす弾んだ幼い声に、プラスチックのおもちゃが手渡された。おまけのチープさとハッピーが比例しない子供の純粋さがなぜか羨ましく思えた。
「トシには反対されてるけど……」
「長く続くとは思っちゃいねェけど続いてほしくないわけじゃねェよ」
近藤を正視できない土方は薄まっていくウーロン茶を眺める。
「焦ってんだよ、あいつ。動かねェとあんたとの繋がりを失いそうで。関係が壊れるのが怖くて動けなかった俺とは逆だ」
トシ、と土方を呼ぶ。土方が抗えなくなることを知っているに違いない。だからこんな力強い視線を向けてくるのだ。顔を上げれば近藤の真摯な視線が恐れなどないように土方を見つめていた。
「忘れていいんだな」
近藤のその目が好きだった。好きだと伝えたかった。
「ああ、忘れてくれ」
見つめ返しながら土方は静かに答えた。
─終─