持っていた紙袋をぶつけるようにして近藤に押し付けた。
「トシなにこれ」
「やる」
土方が言う前から近藤は包みを解き始めていた。土方は心の中で絞められた鶏のごとく叫んだ。渡すだけ渡して立ち去ろうと思っていたが、近藤の思わぬ性急さになんだかそれもできず、視界に入らないように無理やり視線を逸らした。そわそわとあらぬ方向を向きながら近藤の様子を盗み見る。逃げ出したい。でも反応が気になる。
(情けねェな土方十四郎)
(数々流した浮名がすたる)
(いや、それほど流してねェけど)
(女の入る余地なんてねェからな)
(俺の中心は昔も今も近藤勲ただ一人だ)
(別に近藤さんとどうとか、てんじゃなく純粋に……)
(ど、どうとかって、なに……!)
(どうとかってなんだよ!)
(どうにもなんねェよ!死ね俺っ!)
(死ね俺っ!)
(生きろ俺っ!)
不毛な押し問答が脳内でとめどなく繰り広げられる。心拍数は八ビートを刻み、延び続けるタバコの灰がぱらぱらと畳に落ちる。妙に緊張しているのはなんなのか。
「おっ!」
ドキッと心臓が跳ね上がる。
「財布じゃん。かっこいい」
近藤が華やいだ声を上げた。耳の辺りが熱くなり普段出ないような変な汗が出てくる。口の中はカラカラに渇いていてタバコの味も分からない。
「なんかこれトシっぽいな」
「きっ……」
また心臓が跳ね上がった。全身から血の気が失せる。
「気に……」
思わず近藤を見ると満面の笑みと目が合った。
「ありがと。すげぇ嬉しい」
失せた血の気が一気に駆け巡る。体の何かが弛んだみたいに涙が滲んできた。たかが財布一つでこの有様。自分のみっともなさに辟易する。誰かに物を贈るってのはこんなにも心臓に悪いものなのか。
これまで土方は、ねだられて買ってやることはあっても自分から贈りたいと思ったことはなく、ましてやサプライズという形で何の予告もなくプレゼントしたことなどあるはずもなかった。今まで近藤(とその他の人々)がくれたプレゼントも今の土方と同じ思いで贈られていたのだとしたら、なんという幸せ者だったのか。その自覚もなかった。
「でも今日ってなんかの日だっけ?俺の誕生日じゃないし」
以前の財布を取り出し早速中身を移し替えている近藤の姿に思わず頬が弛むが、近藤が顔を上げたので慌てて口の中を噛んだ。
「あんたの財布、だいぶ古くなってただろ。組織の長がそれじゃ見栄えしねェからよ」
冷静さを努めすぎて些かぶっきらぼうな物言いになってしまった。それでも近藤は「ありがとう」と再び礼を述べ、一段と顔をほころばせる。心臓がキュウと音を立てて縮こまる。恥も外聞もかなぐり捨てて走り出したい気持ちでいっぱいだった。走って叫んで、全ての人にハグして分け与えても余りあるほど気持ちが湧き上がってくる。その気持ちを愛と名付けるほど土方は浮かれていた。