二人の間に割って入るように、携帯の着信音が鳴り響いた。離れた近藤の顔が申し訳なさげに呟いたが、電話に出るのに躊躇は見られなかった。
「俺だ。どうした」
出るのかよ!そもそも電源切っといてよ!俺の電話は滅多に出ないのに!……とは言えない。
なんとなく告白めいたことを口走った一週間後、俺は改めて近藤に自分の想いを告げた。近藤が俺の想いに応えてくれたのがその一ヵ月後。悩む近藤の背中を押したのが土方だったらしい。浮かれきっていた俺は、事の重大さに未だ気付いていなかった。
土方を始めとする真選組の面々が菓子折りを持って現れたのは翌日の午前十時だった。遊びに来たような気安さは皆無で、皆至って真剣そのものであった。ちゃらんぽらんに定評のある俺も流石にただ事ではないと、ここに来てようやく気付いたわけだ。万事屋に入りきらないほどの隊士たち一人ひとりに近藤を幸せにすると誓わされ、知らない奴に一発殴られもした。最後に土方のヤローが近藤を頼む、と深々頭を下げた姿は胸に迫るものがあった。号泣する近藤は土方と熱く抱き合い、取り囲む隊士の間からもすすり泣きが聞こえてくる。俺もその涙に応えるべく一人胸の内で決意し、六ヶ月──イチャイチャラブラブエロエロな日々がまったくないまま、現在至る。
「ああ、大丈夫だ」
全然大丈夫じゃねぇよぉ。部屋の隅のほうへウロウロと移動する近藤に向ける目が、つい恨みがましくなってしまう。軽く手招いてみせると、電話の内容からか僅かに躊躇うそぶりを見せたが、素直に膝に乗ってきた。通話は依然として続いている。両腕で抱き込み、露わになっている肌に唇を添わす。甘えるように額を擦り付ければ肌に触れる天パがくすぐったかったのか近藤の喉がクツクツと笑う。笑いを噛み殺し俺の髪を梳きながら電話の相手に短い返事をし続けている。早く切っちまえよと耳に心地よく歯を立てた時、
「いや、今から戻る」
と電話が終わった。
まただ……今回もまた……。せっかく外したワイシャツのボタンが留められていく。未練がましくじっと見つめれば、スマンと眉尻を下げた近藤が軽く口付ける。行かなくてもいんだろ。行かなくてもいんじゃね。行くなよ。行くな。行くなって。行かないでください。
「……ったくよぉ……送ってってやるよ」
眉の垂れた近藤の顔が僅かばかり和らいだ。どうせチキンだよ俺ァ。惚れた相手に無理のひとつも通せねェよ。それでも一秒でも長く一緒にいたくてアウェーに乗り込んでくなんていじらしいじゃないか。一週間ぶりの再会も僅か三十分で終了した。
今みたいに土方からの電話は珍しくない。というか土方の電話で近藤が帰るのは毎回のことだった。親同伴のデートのようなもんだ。
万事屋とは比べ物にならないほど忙しいのも、人命にかかわる仕事だってのも理解しているが、それにしたって多すぎる。土方の嫌がらせとしか思えない。実際この前は隊士の一人が捨てられた子犬を拾ってきたんだがどうしようか、というような内容であった。ふざけてるだろこれ。完全俺への嫌がらせだよね。それでも近藤は必ず帰るのだ。
だったらせめて俺の電話にもっと出てくれてもいいじゃないか……!贅沢言わないから!
お妙のストーカーしてたときのほうが、もっと顔合わせる機会が多かった気さえする始末だった。